JT65A モードにおける、USB AUDIO CODECと PCサウンドカードのデコード能比較
JF2IWL 長倉 大 2017/01/23

前ふり(緒言)
近年、デジタルモードを運用する際、従来の手法であるオーディオインターフェースやPCのサウンドカードを使わず、リグから直接、USB AUDIO CODECで行うことが非常に多くなっています。そこで、そのUSB AUDIO CODECと従来のサウンドカードでのデコード能の差異について比較検討してみました。

やろうと思った経緯・背景(バックグラウンド)
RTTYモードにおいては、PC元々のオンボードサウンドカードでもどうにかなるが、JTモードでは、まったく使い物になりませんでした。そこで、クリエイティブサウンド社のサウンドブラスタ(SB5.1VX)ボードを購入、装着したところ、がぜんデコード能が向上しました。

また、RTTYモードにおいては、USB AUDIO CODECでのサウンドは、上述SB5.1VXサウンドカードに劣っているということを、コンテストにおいて、しばしば経験しました。ではJT65Aモードにて定量的に計ってみましょう、ということで実験を行いました。


実験方法

実験図

アンテナ=ミニマルチアンテナ T33jrHトライバンダ(16mh 北向き固定)
リグ=TS-590S
PC= A、 Bとも、HP社、dcf-5100SFF (Pen4 HT 2.8GHz RAM=4GB OS=WinXP SP3)
JT65ソフトウエア=双方とも、JT65-HF (W6CQZ) Ver.1.0.9.3

実験方法
上記まったく同一のPC、デコードソフトウェアにて、周波数=14076QRGにて、2017年1月22日の09Zからの24時間、デコード比較を行いました。デコードしたデータはPSKRに送り、そのログをまた引き戻して、SH5、コンテストアナライザにて解析しました。

また、SNR深度をみるため、JT65-HFの生ログについても比較しました。 PSKRに送るIDは、SB5.1VXサウンドカード=JF2IWL、USB AUDIO CODEC=JS1JRZ(私の別コール)としました。

JT56-HFへのオーディオ入力は、さまざまな瞬間においてまったく同一レベルになるように注意深く調整しました。


実験中のようす

左=SB5.1VXサウンドカード 右=TS-590のUSB AUDIO CODEC





結果

(1) PSKRに送られた捕捉データの、SH5コンテストアナライザによる解析
SB5.1VXサウンドカード(JF2IWL)
http://59925.org/sh5/jf2iwl/2017/2017_jt65a_sb5.1vx_sound_card_jf2iwl/index.htm
 1,044デコード、捕捉カントリー=54、ユニーク局=484局、Kilometer per QSO=5,331km

TS-590のUSB AUDIO CODEC(JS1JRZ)
http://59925.org/sh5/jf2iwl/2017/2017_jt65a_ts-590s_usb_audio_codec_js1jrz/index.htm
 1,034デコード、捕捉カントリー=54、ユニーク局=478局、Kilometer per QSO=5,345km


(2)JT56-HF生ログ

SB5.1VXサウンドカード(JF2IWL)
59925.org/misc/JT65hf-log_SB51VX.csv
ローカル捕捉局数=のべ3,504局、SNR深度がマイナス23dB以下の局数=156局 最深=マイナス27dB

TS-590のUSB AUDIO CODEC(JS1JRZ)
59925.org/misc/JT65hf-log_TS-590_USB_AUDIO_CODEC.csv
ローカル捕捉局数=のべ3,504局、SNR深度がマイナス23dB以下の局数=163局 最深=マイナス26dB



考察

結果(1)では、PSKRに送られた局数はほとんど変わらず、またカントリー数は同じでした。結果(2)のローカル捕捉ログでは、捕捉回数はまったく同一。また捕捉SNRもほぼ同じ、最深SNRも変わらない。

以上の結果から、TS-590のUSB AUDIO CODECと、サウンドブラスタ・SB5.1VXのデコード能はまったく同じであり、差異は無いことが判明しました。

サウンドブラスタ社のSB5.1VXは、同社の製品の中でも廉価版・入門版(市場価格約3,000円)のものですが、ならば、より高性能なサウンドカードにしてみたらどうか?、、

、、という欲求については、あるEMEerのかたによると、HFよりもさらにS/N深度の求められるEME通信においても、サウンドカードの性能(=~価格)、は安価なものでも充分であり、それよりもシステム自体のS/Nの改善を図るのが先決、とのことでした。

過去、RTTYerのかたがたの間で、サウンドカードの性能について盛んに議論されていた時期がありましたが、「高級なサウンドカードは値段の割りにはあまり意味がない」、という結論に落ち着いたはず。 上述、EMEerのかたの証言はそれを裏付けるものと言えます。

RTTYでのUSB AUDIO CODECのデコード能の悪さにより、リグUSBオーディオに対して好印象が無く、見下していたところがありましたがこの結果により深く反省します。ならばインターフェース機器などでのロスや歪みなどの無い、リグから直接注入なUSB AUDIO CODECのほうが良いかもしれません。

PCに最初から付いているオンボードサウンドカードではさすがにNGですが、わざわざサウンドカードを買う必要もない、PCに負荷かけることもない、オンボードサウンドカードはJT-Alert用に使うが良いでしょう、という穏当な結果です。

RTTYでのUSB AUDIO CODECに対する悪印象は、RTTY(F1B)モード特有なのか、それとも私の思い込み・勘違いなのかは、今となっては不明。(*同日追記:RTTYモードでのUSB AUDIO CODECの印象の悪さは、RTTYでは誤り訂正が無いからかも?、というご指摘をいただきました)---下記にRTTYでの検証結果を追記しました。

以上、実験おわり。この実験を行うきっかけを作って下さったかたがた、アドバイスいただいたかたがたに、深く感謝いたします。
JF2IWL 長倉大


2017年1月27日追記:
ご指摘を頂戴しましたが、わたしはTS-590のUSB AUDIO CODEC。知識が無くて、デジタルで出ているとばかり思っていたのですが、TS-590内部のDACからアナログで出てるんださうです。下図は、「TS-590シリーズ・USBオーディオ機能設定ガイド(PDF)」より転載。ということは、USB AUDIO CODECでもふつうにリグAF出力からでも、一般的に言って、結局はリグのAFの質が問われることになります。(他のメーカーのことは存じあげません)



わたしはPCオーディオ、USBオーディオに詳しいものではまったくありませんので、そのあたりをお酌み取りいただき、この結果は私の環境においてのものであり、「お前の言う通りにしたら失敗したやないけええ!!」、などと、私を責めないように、どうぞよろしくお願いいたします。




2017年1月30日 さらに追記:
「RTTY(F1Bモード)での、リグからのUSB AUDIO CODECは、ふつうのサウンドカードよりも悪いのではないか?」、というもっぱら個人的印象について、BARTG RTTY Spirintコンテストにおいて、検証してみました。ソフトウェアは、4ヶまでデコーダが出せるN1MMクラシック・コンテストロガー(バージョンはV13.12.0)、用いるデコーダエンジンはG3YYD局開発の2Toneというデコーダです。

2Toneのバージョンはどちらも15.02aとし、FFT画面の高さが同じになるように、サウンドカードへの入力を調整、のち、「弱い局がランニングしているようすをじっと眺める」、という、いささか定性的な手法を取りました。


試験中のデコーダ画面




上の画像は、うちではどうにかプリント出来るくらいの弱さのKB7AZ局がランニングしているところです。右がTS-590のUSB AUDIO CODEC、左がSB5.1VXサウンドカードです。約20分間眺めていたところ、デコーダ能に明確な差異は無く、AFCの追従具合もほぼ同じ、

そのほか、強力局がRUNしているところに弱い局が呼ぶ場面も見てみましたが、同様、両者のデコーダ能は、ほぼ同じ感じでした。(これは真に確かめるにはさまざまな場面で長時間のデコードログ取らなければダメです)

つまり、「RTTYではUSB AUDIO CODECは良くないのではないか?」、というのは単に私の思い込みであることが判明しました。コンテストでは慌てているので、そのような印象を持ってしまったかと思われます。

なお、同じくして私のRTTY用、3つめのサウンドカード、PLANEX社のPL-US35AP USBドングルサウンドデバイス(実売価格=1,000円ほど)、とも比べてみましたが、前者ふたつのサウンドデバイスと同じように、良くデコードしていました。





サウンドカードのS/Nについて
そこで次に、サウンドカードのS/Nについて調べてみました。アドバイスいただいたには、「リグの電源を切り、MMTTYのXYスコープを見て、出来るだけ点が小さい方がS/Nが良い」、とのこと。上記3者の特性をMMTTY(バージョンはいずれも168A・・このへんになるともう疲れた・・・)、で見てみました。





上から、TS-590のUSB AUDIO CODEC、中段=SB5.1VXサウンドカード、下段=PLANEX社USBドングルサウンドデバイス。SB5.1VXサウンドカードにはTS-590のアクセサリ端子→インターフェースも繋いだ状態で見ています。

これはサウンドカードのみならずPCシステム全体のS/Nを見ているわけですが、USB AUDIO CODECとSB5.1VXサウンドカードでは、XYスコープの点の大きさは変わりません。またWF画面もまっ暗できれいです。

さすがに1,000円のUSBドングルサウンドデバイスには1本、ヘンなスジが出ており、またWFにもモヤモヤがあります(このモヤモヤは2Toneで見るとはっきり判る)。

上記の結果より、USB AUDIO CODECとSB5.1VXサウンドカードのS/Nに違いは無い、と言えそうです。



ふたたび結論
以上、JT65Aモード、および、RTTYモードでのサウンドカード試験により、サウンドカードを、高いオカネ出して奢ることもない、USB AUDIO CODECで充分だろう。そして経験からすると、リグのAFの質も重要で、耳で聴いても静かで聞きやすい音のリグが良さそうだ、という感じがしています。

ですが、RTTYコンテストでの試験で痛感したには、もっとも重要なのは「アンテナ」です。「あと1本エレメントがあれば!」、と、何度思ったことか。アンテナは最重要第1フロントエンドでありますから、サウンド云々に拘るより、エレメントの1本も足す努力をしたほうが良いでしょう。という、ごくまっとうな、当たり前の結論に到達しました。



Appendix(おまけ)

SH5の解析結果より

トップテンカントリー



誰がいちばんアクティブだったで賞



時間/アクティビティ(Condx)


*冬ということもありますが、サイクルピークもだいぶん過ぎ、もはや14メガですら、日没とともにバッサリ落ちます。また、毎日のことですが、日没後、11ZあたりにまたふたたびEU方面が一瞬だけ上がります。




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